先入観はラーメンを不味くする
「アキピデが来るまでこの建物の裏で待ってるから来たら連絡して」
ヒロはそう言って新宿遊歩道公園四季の道へ消えていった。
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前日、崇はアキピデのマンションに泊まっていた。文京区のマンションは、まさに文教地区と言ったエリアにあり食・スーパー・本・雰囲気全てが最高であった。文京区のマンションで夜、過ごしていると県外にいたヒロが文面を送ってきた。
「明日東京に行くからアキピデに内緒で」
崇は笑った。またいつもの冗談を言っている。このような内輪は日常茶飯事であった。
しかし様子がおかしかった。ヒロの文面は真面目めいていた。
次の日アキピデは朝早く、用事に出かけて行った。
ヒロは本当にやってきた。
ヒロは丸の内KITTE、地下1階のLOWSONでお金を下ろしていた。
崇が経験した中で最大規模のドッキリ、サプライズ、冗談であっただろう。
ヒロは最大のチルをやってのけた。
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アキピデとは昼を新宿ゴールデン街のラーメン屋で食べることになっていた。
アキピデと合流した、彼はまだヒロが近くにいることを知らない。
私は歓楽街の特異な様相と犯罪のジャーナルに関心があり、新宿歌舞伎町の本を読み漁ったことがある。
新宿ゴールデン街は新宿歌舞伎町のすぐ東に位置する。ゴールデン街はホテル、クラブ街というよりは古びたスナック街と言った雰囲気である。近くにはパリジェンヌ事件で有名な風林会館がある。夜の歌舞伎町の煌びやかで欲望の渦巻く雰囲気とはかけ離れ、異様に静けさを放っていた。崇はここに違和感を感じ、不気味さを切り取った。この後ここでラーメンを食べることになる。渋谷にある同じチェーンの方が格段に美味しかった。これは先入観のせいだ。
二人でラーメン屋に入った。
「二人で」、そう言おうとした瞬間、アキピデの眼前にここにはいないはずのヒロの姿が現れた。
アキピデの顔は引きつって見えた。
崇
(この作品はフィクションです)