にんじんとるねーど

富山が産んだチルユニット『石垣クリエイターズ』でみんなチルしよう

好きな尾崎放哉の詩

夕日の中へ力いつぱい馬を追ひかける

 

(一日物云はず蝶の影さす)

 

なぎさふりかへる我が足跡も無く

たつた一人になり切つて夕空

何も忘れた気で夏帽をかぶつて

わかれを云ひて幌をろす白いゆびさき

血がにじむ手で泳ぎ出た草原

うそをついたやうな昼の月がある

 

 

便所の落書が秋となり居る

 

寒鮒をこごえた手で数へてくれた

 

笑へば泣くように見える顔よりほかなかった

池の氷の厚さを児等は知つてる

女に捨てられたうす雪の夜の街灯

落ち葉拾うて棄てて別れたきり

こんな大きな石塔の下で死んでゐる

風が落ちたままこ駅であるたんぼの中

するどい風の中で別れようとする

うつろの心に眼が二つあいてゐる

筍ふみ折つて返事してゐる

夜明けが早い浜で顔を合す

ここ迄来てしまつて急な手紙書いてゐる

いつしかついて来た犬と浜辺に居る

とんぼが寂しい机にとまりに来てくれた

井戸のほとりがぬれて居る夕風

なん本もマツチの棒を消し海風と話す

山に登れば寂しい山がみんな見える

追いかけて追い付いた風の中

障子あけて置く海も暮れ切る

竹藪に夕陽吹きつけて居る

 

自分が通つただけの冬ざれの石橋

 

風吹きくたびれて居る青草

故郷の冬空にもどつて来た

八ツ手の月夜もある恋猫

マツチつかぬ夕風の涼しさに話す

密柑山の路のどこ迄も海とはなれず

焼跡はるかなる橋を淋しく見通し